Training Program

救急科専門研修プログラム

当センターでは、地域の救急医療を担える人材の育成に注力しています。日々の臨床に加えて、地域における救急医療に関わる教育、メディカルコントロールにも携わり、広く奈良県の医療に関わることができます。臨床に加えてこうした活動にも参画できる救急科専門医取得には日本専門医機構制度に則ったプログラムがあります。

Ⅰ.研修プログラムの名称

奈良県立医科大学高度救命センター 救急科専門医育成(救急集中治療専攻)プログラム

 

Ⅱ.プログラムの概要

本プログラムは原則として卒後3年目以降の研修医を対象として、3年間、奈良医大高度救命救急センターまたは奈良県立奈良総合医療センター救命救急センターに専従し、救急科専門医の育成を行うための後期研修プログラムである。 

 

Ⅲ.教育到達目標

内因性、外因性を問わず生命の危機にある患者に対する初期対応能力を修得し、入院後は救急集中治療を行うことができる人材を育成することを目標とする。

 

Ⅳ.研修施設

1.基幹研修施設(奈良県立医科大学付属高度救命救急センター) 研修プログラム責任者名:福島 英賢

2.関連研修施設(奈良県立総合医療センター救命救急センター) 研修プログラム責任者名:松山 武

 

Ⅴ.研修プログラム

当施設では救急外来で初期治療からスムーズに集中治療に移行できるため、初期の病態から学ぶことが可能である。救急集中治療領域で最も重要な心肺停止蘇生後や敗血症、多発外傷、重症急性膵炎、急性中毒症例が豊富である。

 

1年目(奈良医大高度救命センターで研修を行う。)

A)到達目標

救急外来および救急集中治療室において、内因および外因性の重症患者に対して、指導医の指導の下、基礎的な呼吸・循環管理が行える。

 

B)指導体制

専攻医1人に対して担当指導医(救急専門医)を1人選定する。また別途、後期研修の責任者を置いて当該研修の標準化、プログラムの適正な実施を担当させる。

 

C)研修内容

主治医となる上級医とペアーで患者を担当する。臨床的な診断および治療方針に関しては主治医から指導を受け、担当指導医からは基本的臨床マナー、自立的学習法について学ぶ。

2年目(関連研修施設である奈良県立総合医療センター病院救命救急センターにて、重症患者の診断と治療を中心に研修を1年間行う。)

A)到達目標

外傷症例を中心に指導医の指導の下、初期治療および緊急手術の助手、術前術後管理ができる。

 

B)指導体制

専攻医1人に対して担当指導医(救急専門医)を1人選定する。頭部外傷、胸腹部外傷、四肢外傷に関して各領域の専門医から指導を受ける。

 

C)研修内容

単独で主治医となり、多発外傷を中心に各臓器損傷の治療に当たり、各領域の専門医からの助言と指導を受ける。

3年目(奈良医大高度救命センターで研修を行う。)

A)到達目標

重症救急患者の外来から入院さらに集中治療に至るまで、外科的治療を除く標準的な管理を単独で実施できる。

 

B)指導体制

後期研修担当の責任者を設置し研修の標準化、プログラムの適正な実施を計る。

 

C)研修内容

主治医となって後輩後期研修医を指導しながらペアーで患者を担当する。臨床的な治療方針に関して自身で決定を行う.回診、カンファレンスで必要に応じて診断、治療方針に関して上級医から指導を受ける

Ⅵ.専攻医数

3名/年

後期研修の期間は半年以上より受け入れています。その後他科で後期研修される方も大歓迎しております。期間が1年以内の場合は当科にて研修、2年以上の場合には、一次、二次救急患者に対する理解をより深めていただくために、救急搬送受け入れ年間6,800件を誇る、淀川キリスト教病院で半年間研修していただく事も可能です(希望により各診療科での研修が可能です)。

 

当科研修中にはICLS (Immediate Cardiac Life Support)の受講やインストラクターとして活動することにより、一般的な心肺蘇生法の修得と普及に尽力していただきます。また、外傷関係でも同様に、JPTECTM (Japan Prehospital Trauma Evaluation and Care),JATECTM(Japan Advanced Trauma Evaluation Care) の修得と普及に協力していただき、外傷初期診療に習熟していただきます。

 

当科では、厚労省の災害派遣医療チーム (DMAT, Disaster Medical Assistance Team)、および国際協力機構(JICA, Japan InternationalCooperationAgency)の事業である国際緊急援助隊医療チーム(JMTDR, Japan Medical Team for Disaster Relief)に参加しており、チームに参加し、研修などを通し、災害時には国内、国外の援助活動に参加可能です。

 

3年間研修される場合、救急専門医申請資格を得ることができます(淀川キリスト病院も当科と同様、救急専門医指定施設です)。ただし、救急医学会会員歴5年が必要ですので専門医取得時期は人により前後しますので(取得するときに大学病院を離れていても可能です)、早期の入会をお勧めいたします。

半年以上の後期研修後、当科を離れ自分の特性にあった専門科を選択していただくことが可能です。

 

救急専従医を希望される方は、subspecialityを選択し研修することが可能です。今までに集中治療、整形外科、一般外科、脳外科などに研修派遣してきております。

 

急性期病態をScienceとして分析理解するために、研究をおこなっておりますが、大学院に入学し、研究、学位取得後、留学も可能です。当科よりの留学者は今まで3人です。学位に関しましては大学院に入学し、臨床を行いながら研究を行い取得することも可能です。

 

福島教授以下、まだ新しい小さな科ですが、楽しい科ですので一度見学してみて下さい。

1.当センターは、県内唯一の高度救命センターであります。またドクターヘリ、ドクターカーによる病院前診療に積極的に取り組んでおり、さらに県内唯一の基幹災害拠点病院でもあるこ とから、災害医療にも取り組んでいます。重症外傷はもちろん、様々な救急病態を経験することができ、救急科専門医の養成にうってつけの施設です。

 

 

2.医者になっての最初の5年間は非常に重要ですが、ずっと将来続ける何か一つの科を専門家として究めていく前に、救急医療的なものを、後期研修の時期にしっかりと押さえておくことは、先生にとってはもちろん、将来にわたり、先生の目の前に現れる患者さんにとっても、他の医師との差別化の点においても、先生方に利することはあっても、損になることはないと思います。当科での後期研修を、今は他の専門研修を始められない、皆から遅れてしまう月日と思うかも知れませんが、10年も経てば、それは遅れではなく、短かかった有意義な月日になるのは確実です。